子育てと地域活動を通じて実感する、都市と自然が調和した札幌での暮らし/星野さん
北海道札幌市在住の星野さんは、福岡から移住した札幌移住者の1人です。現在は「一般社団法人相互支援団体かえりん」を立ち上げ、おさがりくるりん(お下がり交換会)などを通じて地域のつながりを育んでいます。
都市機能と自然が調和した札幌での暮らしの中で、地域に根ざした活動に取り組む星野さんに、札幌市への移住についてお話を伺いました。
転勤をきっかけに選んだ札幌での生活
――まずは、札幌市に移住されたきっかけを教えてください。
星野さん:きっかけは夫の転勤です。転勤の引っ越し先が東京、大阪、札幌と希望を出せたので、希望を出して札幌に来ました。少女漫画『動物のお医者さん(佐々木倫子著)』で「北海道大学」が舞台となっていたこともあって北海道が大好きで、20代初めの頃には2人で札幌に旅行もしていました。元々私たちは福岡に住んでおり、雪に対する憧れがあったのも札幌に決めた理由です。
また、当時1才の子どもがいたので「子育てするには絶対札幌だよね」という思いがあり、転勤先を札幌に決めました。
――移住前との生活の変化についてお聞かせください。
星野さん:雪のある生活なので、すべてが違いました。福岡と違って札幌は冬の時期がマイナス10℃近くにもなるので、景色の変化からすべてが変わりますし、まず外で歩けなかったですね。例えば、春先の明け方などになると目の前の歩道が凍ってすべて氷になっており、隣は道路なので出られず「どうやって歩けばいいの…?」となりました(笑)。また、当時は赤ちゃんを抱っこしていたので、少し怖かったです。
一方、夏はすごく快適になりました。夏でも涼しい日が毎日続く地域があるんだと、札幌に来てから感動しました。福岡と違って、札幌では暑くなったとしても耐えられますし、外に立っていても汗をダラダラとかくことがなくなりました。
自然を活かした子育て環境が魅力の札幌市
――子育ての面から見て、札幌のよかったところはありますか。
星野さん:子どもが楽しそうですね。夏も外でいっぱい遊べますし、冬はスキーやそりなど雪があるからこその遊びが多彩にあります。北海道はアクティビティが多彩で、夏にはキャンプ場に行きますね。湖畔のキャンプ場が多くて、湖畔でキャンプできるところは北海道以外に多くはないと思います。自然豊かで、北海道は広大な土地がすべてフィールドになるので、県境のような意識的なハードルがなくなり「どこでも行ける!」という感じになりますね。
冬には、保育園から家までの往復などもそりに乗って移動するので、それだけで子どもは楽しんでいました。札幌は子どもにとってもよい環境だと思います。
――札幌市でよく利用する施設があれば、教えてください。
星野さん:子どもがいるので、子どもが行きたいところに行っています。北海道の公園は恐ろしいほど大きくて、数も多く、順次市内の公園を回っていることが多いですね。その中でも人気なのが「サッポロさとらんど」です。園内を電車の形をしたバス(SLバス)が走っていたり、農園で収穫を体験したりできるので、子どもとよく行っていますね。
――札幌市の暮らしやすさはどのようなところでしょうか。
星野さん:札幌に来てから人の特性が違うと感じました。「来る者拒まず、去る者追わず」で、さっぱりとした方が多い印象です。人付き合いがしやすく、そういった面で札幌は都会的だと感じました。
地域をつなぐ「おさがりくるりん(お下がり交換会)」の取り組み
――一般社団法人相互支援団体かえりん(以下、かえりん)では、どのような活動をされていますか?
星野さん:主に「おさがりくるりん(お下がり交換会)」を実施しています。おさがりくるりん(お下がり交換会)とは、サイズアウトしてしまったけどまだ着られる子ども服を持ち寄って、必要な洋服を持って帰ることができるイベントです(参加費 1回500円)。
全国で一般的な「おさがりくるりん(お下がり交換会)」では、洋服は10着で1:1での交換だったりするのですが、かえりんでの「おさがりくるりん(お下がり交換会)」は特殊で、20リットルより少し大きな袋に詰め放題で子ども服を持って帰れるようになっています。3、40着が袋に入って、またアウターは別になっていたりするので、かなりお得です。
おさがりについては回収箱を札幌市内にも数か所置いておりますし、当日持ち寄って下さる方もいます。
星野さん:コロナ禍以降は人数制限をしているのですが、1回あたり100世帯、200名ほどの方が参加されます。実際に「本当に助かっています」「おさがりくるりん(お下がり交換会)がないと困ります」というお声も本当に多く、札幌から転出される方の中には「おさがりくるりん(お下がり交換会)がない地域だから不安です」というお声を頂いたこともあります。
子どもは体が大きくなるとすぐに着ていた洋服が着られなくなり、その都度買い足さないといけないですよね。北海道では特に冬用の衣類にお金がかかりますし、スキーウェアなどは単純に高い。「洋服代が高くて大変な人がいるなら、お互いに助け合えばいいのでは?」という思いから、「おさがりくるりん(お下がり交換会)」を始めました。
――活動のきっかけは何でしょうか?
星野さん:札幌に来た当初は知り合いがおらず、子どもがいたので外に出歩くこともできなくて、うつ状態になりました。私自身だけではなく、産後うつで友人が亡くなってしまったこともありました。こういった状況の中で「子どもが産まれてハッピーなはずなのに、なぜお母さんが精神的に病んだり、亡くなってしまったりしないといけないのか?」と疑問にもち、社会問題を解決したいと思ったのが活動のきっかけです。
新たな試み「シェア型書店」で目指す地域交流
――今後、札幌市でチャレンジしてみたいことがあれば教えてください。
星野さん:熊本出身の友人と一緒に、シェア型書店「ぷらっとBOOK」を作っています。書店の棚1つひとつにオーナーがいて、オーナーが売りたい本を置けるようになっています。現在(2024(令和6)年時点)はオーナーを集め始めている段階で、100名を超える予定です。
――「ぷらっとBOOK」を作ろうと思ったきっかけは何でしょうか。
星野さん:子育てが楽になるためには、子育て世代と子育てしていない層がさらに触れ合う必要があると思っています。一方で、子育てが始まると、子育てをしていない方との触れ合いがかなり減ってしまい、社会の分断や孤独感を生んでいます。さらに、町内会などでも参加人数が少なくてあまり機能していないとなると、子育てを終わった人とも触れ合う機会がない。人は知らないものを嫌うので、子育てをしていない方からすると、例えば赤ちゃんの泣き声も「うるさい」となってしまいます。
そのため、知ってもらう、触れてもらうことが最大に必要なことだと考えています。何か開かれた場所に、子どもがいる・いないに関係なく集まれるとよいと考えた時に、本は赤ちゃんの絵本から始まり高齢者まで誰でも触れられる、類まれなツールだと思いまして。多くの人にリーチして、かつハードルが非常に低い身近なツールで、人と人がつながる場所を作りたいと考えています。
「ぷらっとBOOK」ではオーナー同士のふれあいもあれば、お客様同士のふれあいもあるようなところを目指しています。移住者には開かれた場所が必要なので、「おさがりくるりん(お下がり交換会)」もそうですが、「ぷらっとBOOK」も移住者が頼れる場所であると思います。
――これから札幌市に住むことを検討されている方にメッセージをお願いいたします。
星野さん:ある時代や集団、支配する価値観や考え方が劇的に変化する「パラダイムシフト」があります。人生においてパラダイムをシフトさせることを意識的に行わないと、人生は変わっていかない、広がっていかないという話があります。
札幌は住環境の面で、意識や考え方も変えていく必要があり、パラダイムシフトはすぐに可能です。
また、ご飯はおいしく、雪のある生活は本当に美しいです。夜に歩いていると雪がキラキラと降っていたり、木に雪が積もって固まっていたり、そういった経験は中々できません。自然の美しさとともに、都市で生活できる地域はおそらく札幌だけだと思います。都市的機能も兼ね備えながら、自然の美しさをダイレクトに感じられるので、感性が豊かになるのではないかと感じております。

一般社団法人 相互支援団体かえりん
代表 星野さん
所在地:北海道札幌市中央区
URL:https://kaerin.or.jp/
※この情報は2024(令和6)年12月時点のものです。